借りてきた猫のよう

 さて、ご飯をあげて、家で寝ていくようになり、ごろーさんはほぼ飼い猫になりましたが、以前としてトイレは外でしてきます。そして縄張りの見回りは毎日決して欠かしません。多分猫の集会にもでていると思います。というのは、時々夜中に猫の雄叫びが聞こえる時があるからです。外の世界はきっと楽しいけれども、色々な危険が待ち受けているのでしょう。

 そんなある日のこと、ごろーさんがいつものように我が家に帰ってきました(寄り道しにきたのかもしれません)。家に帰ってきて額をなでなでしているとちょっと違和感がありました。どうしたのかなと思ったら後頭部に2ミリ位の茶色いトゲが刺さっているように見えました。あれ〜これ何だろう?と思いちょっと引っ張ってみましたが抜ける気配がありません。もっと強く引っ張ってみようかとも思いましたが怖かったのと少し不安になり妻と相談して動物病院に連れていくことにしました。

 さて、どうやって連れて行くかが問題でした。妻が実家で飼っている猫は座布団カバーに入れて徒歩数分の病院に連れていくとのことでした。でも我が家にはそんなものはありません。そこで思いついたのが洗濯ネットでした。抵抗するごろーさんに二人がかりで洗濯ネットを被せてチャックを締めました。そうするとごろーさんはもごもご動けるものの逃げ出す事はできなくなりました。うちのアパートはペット不可だったので、連れている姿を他の住人に見つからないように、更に青いデイバックの中に入れて駐車場まで運びました。

 途中で鳴かれないかヒヤヒヤでしたが無事に車に乗せることができました。そしてデイバックを開けてやると洗濯ネットごしに顔を現しました。ごろーさんはネットから出ようと洗濯ネットに顔を押し付けますが洗濯ネットはよくできていて逃げ出すことはできません。その姿はまるで銀行強盗のような様相でした。ごろーさんは車に乗るのは初めてだったのでしょう、周囲を珍しそうにキョロキョロと眺めていました。10分程で無事に病院に到着しました。

 病院の受付で症状を伝えるとお名前は?と聞かれたので○○ですと名字を答えると、猫ちゃんの名前ですよと言われ吾郎ですと伝えると○○吾郎ちゃんですねと言われ診察券ができました。待合室でしばら順番を待っていて、いよいよ診察室に入りました。診察台にごろーさんを座らせる、もしかしたら置いたと言う方が正しいかも、と借りてきた猫とはこの事を言うんだと思うほど静かにちょこんと座っていました。先生にもおとなしいね〜と褒められ、普段の仕草を知っている我々は吹き出しそうでした。でも、ごろーさんは肉球に汗をかいていたので実はとっても緊張して嫌だったのだと思います。

 先生に症状を伝えて診察してもらうと、これは刺さっているのではなくて、爪みたいのが生えてきたのだよとのこと。こういう事はまれにあるとのことですぐに切除してくれました。特に薬とかも処方されなかった(もしかしたら塗り薬位あったかも)と記憶しています。先生はもしかしたらまた生えてくる事があるかもと言っていましたが、その後生えてくる事はありませんでした。家に帰ると、ごろーさんは逃げるように外へ駆け出していきました。でもいつも通りご飯の時間になると戻ってきました。
やれやれです。