ごろーさん帰らず… 

 ごろーさんの体調も回復して、しばらくは平和で平凡な日々を過ごしておりました。

 この頃のごろーさんの1日は朝に我が家に来て朝ごはんを食べる事に始まります。そしてしばらく部屋の椅子の上で睡眠。そしてまた外に見回りに出かけていく。夜私が会社から帰ってくるとご飯を食べにやってきて、またしばらくお休みになる。そして夜中になるとまた見回りに出かける。という感じです。我が家に帰ってきてベランダのドンという音とともに入ってきます。この平凡な行為が大切だったのだと思い知らされる事件が発生しました。

 そんなある晩のこと、いつもやってくるはずのごろーさんの姿が見えません。妻ともどうしたのだろうと話していましたが、まあ一晩位そういう事もあるだろうとはじめはあまり気にしていませんでした。しかし、翌朝になってもごろーさんはやってきませんでした。どこかで食べていなければお腹も空いているはずで、段々心配になってきました。しかし、会社にも行かなければいけないので後ろ髪を引かれる思いで会社に行きました。

 夜になり帰宅して、妻に聞いてみましたがやっぱりごろーさんの姿は見えないとの事でした。そこで近所を探してみる事としました。猫の行動範囲はどの位かわかりませんでしたが、多分半径100m位の範囲を探したと思います。夜なのでよくわからない点もありますが他の猫含め猫の気配はありませんでした。

 翌日(失踪2日目)は週末だったので、昼間から探しに出かけました。ごろーさんを見かけた事のある裏の教会や、爪とぎしていた空き地とか、心当たりの所はくまなく探してみましたが手掛かりは見つかりませんでした。もしやどこかで車にでも・・・もしくは首輪をつけてないので誰かに保護されているのか・・・・とか色々な事が頭をよぎりました。

 失踪3日目、相変わらずごろーさんは現れません。段々心配というより気持ちが沈んできました。妻は実家で飼っていた猫がいなくなった時に「おまじない」を紙に書いて普段出入りしている所に張っておいたら帰ってきたと言い出しました。それは百人一首にある「立ち別れ いなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば 今かへりこむ」中納言行平 でした。

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もうこうなったら神頼みしかありません。ベランダ側の窓に張り祈ることとしました。実際に貼ったのはこれです。

 失踪して4日目でした。私と妻はかなり悲しい気持ちになっておりました。諦めかけた夜、ベランダで猫の鳴き声がした気がしました。もしかしてと思うと同時にドンッという音がしました。ベランダに出るとそこにはごろーさんがいました。ごろーさんどうしたの?と呼びかけました。ごろごろ喉をならしています。少し薄汚れていましたが怪我している感じはありません。家に入るとミルクとご飯を一気に平らげました。どうやら失踪していた間何も食べていなかったみたいです。またちょっとお疲れのようでそのまま家で眠りにつきました。しかしながらおまじないの効果は絶大でした。この事件で一段とごろーさんは家族の一員となった気がしました。

しかしまる4日間もどこで何をしていたのでしょうか?雌猫を追いかけて迷子になったの? ちょっと家出をしてみようと思ったのか? 本当になぞの失踪でした。