以前書きましたワクチン事情の続編となります。
ワクチン接種状況
日本でもワクチン接種が本格化してきました。世界のワクチン接種状況と比較してみましょう。日本はワクチン接種数では4月30日時点で25位でしたが、6月30日時点では11位に急上昇しました。人口比接種数では36%となっております。
接種しているワクチン種類でみると、中国は自国製のシノファーム、シノバックで全量をまかなっているようです。ロシアも同様に自国製ワクチンで全量をまかなっているようです。インドはアストラゼネカに加えアストラゼネカからライセンスを受けた自国製のワクチンを併用しています。アメリカはファイザーとモデルナが主となっています。それ以外の国は政治色強くアメリカ、ロシア、中国から供給を受けているようです。
なお、下図中に略号で表したのはワクチン種類となります。Pf=ファイザー、As=アストラゼネカ、Ga=ガマレヤ、Mo=モデルナ、J&J=ジョンソン&ジョンソン、SP=シノファーム、I=インド血清研究所、SV=シノバック
また、前回順位は4月30日時点の順位となります。
順位 | 前回順位 | 国名 | ワクチン接種数 | 人口比接種% | Pf | As | Ga | Mo | J&J | SP | I | SV |
1 | 1 | 中国 | 1,244,675,000 | 86.48 | ○ | ○ | ||||||
2 | 3 | インド | 329158139 | 23.85 | ○ | ○ | ○ | |||||
3 | 2 | アメリカ | 326521526 | 97.63 | ○ | ○ | ||||||
4 | 5 | ブラジル | 98827485 | 46.49 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
5 | 4 | イギリス | 77909177 | 114.76 | ○ | ○ | ○ | |||||
6 | 6 | ドイツ | 74871502 | 89.36 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
7 | 7 | フランス | 54483343 | 80.64 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
8 | 9 | イタリア | 51596398 | 85.34 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
9 | 8 | トルコ | 50608142 | 60.01 | ○ | ○ | ||||||
10 | 12 | メキシコ | 45898210 | 35.6 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
11 | 25 | 日本 | 45612120 | 36.06 | ○ | ○ | ○ | |||||
12 | 10 | インドネシア | 42744641 | 15.63 | ○ | ○ | ||||||
13 | 13 | スペイン | 42027584 | 89.89 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
14 | 11 | ロシア | 40027944 | 27.43 | ○ | |||||||
15 | 15 | カナダ | 37384820 | 99.05 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
16 | 16 | ポーランド | 29242214 | 77.27 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
17 | 21 | アルゼンチン | 20543325 | 45.45 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
18 | 26 | 韓国 | 19249157 | 37.55 | ○ | ○ | ○ | |||||
19 | – | モロッコ | 19109805 | 51.77 | ○ | ○ | ○ | |||||
20 | – | コロンビア | 18281743 | 35.93 | ○ | ○ | ○ | |||||
21 | 19 | サウジアラビア | 17880870 | 51.36 | ○ | ○ | ||||||
22 | 17 | UAE | 15362342 | 155.33 | ○ | ○ | ○ | |||||
23 | 24 | ベルギー | 10905591 | 94.1 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
24 | 18 | イスラエル | 10768822 | 124.42 | ○ | ○ | ||||||
25 | – | フィリピン | 10443407 | 9.53 | ||||||||
26 | 20 | バングラディッシュ | 10103015 | 6.13 | ○ | |||||||
27 | 22 | ハンガリー | 9839749 | 101.86 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
28 | 23 | ルーマニア | 8958089 | 46.57 | ○ | ○ | ○ | |||||
29 | 28 | ポルトガル | 8699066 | 85.31 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
30 | 32 | ギリシャ | 8391535 | 80.51 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
31 | 30 | チェコ | 8243977 | 76.98 | ○ | ○ | ○ | |||||
32 | 45 | マレーシア | 8083685 | 24.98 | ○ | ○ | ○ | |||||
33 | 36 | ドミニカ | 7842179 | 72.29 | ○ | ○ | ○ | |||||
34 | 29 | スウェーデン | 7789784 | 77.13 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
35 | 31 | オーストリア | 7754435 | 86.1 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
36 | 35 | オーストラリア | 7645585 | 29.98 | ○ | ○ | ||||||
37 | 38 | ペルー | 7441097 | 22.57 | ○ | ○ | ||||||
38 | 34 | カンボジア | 7251656 | 43.37 | ○ | ○ | ○ | |||||
39 | – | カザフスタン | 5335768 | 28.42 | ○ | |||||||
40 | – | フィンランド | 4322972 | 78.02 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
41 | 41 | ノルウェイ | 4183148 | 77.16 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
42 | 39 | ウルグアイ | 3937152 | 113.34 | ○ | ○ | ||||||
43 | – | ヨルダン | 3907618 | 38.3 | ○ | ○ | ○ | |||||
44 | – | ベトナム | 3776980 | 3.88 | ○ | ○ | ||||||
45 | 40 | モンゴル | 3767598 | 114.93 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
46 | 47 | 香港 | 3729301 | 49.74 | ○ | |||||||
47 | – | スリランカ | 3693103 | 17.25 | ○ | ○ | ○ | |||||
48 | 43 | スロバキア | 3622967 | 66.36 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
49 | 48 | アゼルバイジャン | 3511219 | 34.63 | ○ | |||||||
50 | – | ネパール | 3356335 | 11.52 | ○ | ○ |
接種スピード比較と日本の状況
ワクチン接種数が人口比で3%を超えた日を起点(ゼロ日)として各国の接種スピードを比較しました。ワクチン接種率が100%を超えるのは2回接種が必要なワクチンが多いためです。現在模範となっているイスラエルの例をみると120%(イスラエルでは2回接種ワクチンが使われているの60%の人が2回接種を終える)を目標値とみるのがよいと思います。
日本は接種が本格化して2ヶ月程経過しましたが、このままの接種スピードが維持されると仮定すると接種率が120%に達するにはまだ3ヶ月以上はかかる見込みです。10月末頃には以前の生活に戻れるかもしれません。
接種が先行している各国の状況
さて、ワクチンの接種が順調に進んだとして、その後の世界はどうなるのでしょうか?
それを予想するため人口比で接種が進んでいる国のランキングを下表に示します。
比較的人口の少ない国や島国などで接種が進んでいます。
また、その形態はワクチンの種類により分類できることがわかります。
シノファーム(SP)が多い国:UAE、セーシェル、バーレーン など
シノバック(SV)が多い国:チリなど
ガマレヤ(スプートニクV)が多い国:サンマリノなど
ファイザー、モデルナなどm-RNAが多い国:イスラエル、アメリカ、日本など
ファイザー、モデルナ、アストラゼネカを併用している国:イギリス、EU諸国、カナダなど
この分類別に解析してみます。
国名 | ワクチン接種数 | 人口比接種% | Pf | As | Ga | Mo | J&J | SP | I | SV | |
1 | UAE | 15362342 | 155.3 | ○ | ○ | ◎ | |||||
2 | マルタ | 670759 | 151.9 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
3 | ケイマン諸島 | 93525 | 142.3 | ○ | |||||||
4 | セーシェル | 138581 | 140.9 | ○ | ◎ | ||||||
5 | サンマリノ | 44515 | 131.2 | ◎ | |||||||
6 | バーレーン | 2122296 | 124.7 | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | |||
7 | イスラエル | 10768822 | 124.4 | ○ | ○ | ||||||
8 | ガーンジー | 81164 | 121.1 | ○ | ○ | ○ | |||||
9 | アルバニア | 127256 | 119.2 | ○ | ○ | ||||||
10 | アイスランド | 401582 | 117.7 | ||||||||
11 | モンゴル | 3767598 | 114.9 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
12 | イギリス | 77909177 | 114.8 | ○ | ◎ | ○ | |||||
13 | ウルグアイ | 3937152 | 113.3 | ○ | ○ | ||||||
14 | チリ | 21390989 | 111.9 | ○ | ○ | ◎ | |||||
15 | カタール | 3145062 | 109.2 | ○ | ○ | ||||||
16 | キュラソー | 167493 | 102.1 | ||||||||
17 | ハンガリー | 9839749 | 101.9 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
18 | カナダ | 37384820 | 99.1 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
19 | アメリカ | 326521526 | 97.6 | ○ | ○ | ||||||
20 | フェロー諸島 | 47304 | 96.8 | ||||||||
21 | ベルギー | 10905591 | 94.1 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
22 | モルディブ | 507741 | 93.9 | ○ | |||||||
23 | キプロス | 809234 | 91.1 | ||||||||
24 | スペイン | 42027584 | 89.9 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
25 | ドイツ | 74871502 | 89.4 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
26 | ルクセンブルク | 551725 | 88.1 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
27 | 中国 | 1,244,675,000 | 86.5 | ○ | ○ | ||||||
28 | オーストリア | 7754435 | 86.1 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
29 | イタリア | 51596398 | 85.3 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
30 | ポルトガル | 8699066 | 85.3 | ○ | ○ | ○ | ○ |
UAE・バーレーンの状況
UAEとバーレーンはペルシャ湾岸にあり地理的に近い関係です。また、同じシノファームワクチンを主に使用していますが、傾向には大きな違いがありました。UAEは当初から陽性率が低くワクチン接種数が20%を過ぎた頃より陽性率が徐々に低下しています。一方でバーレーンは接種が進んでも陽性率が上昇を続けました。そして接種数が100%を超えたあたりから急速に陽性率が低下しました。
チリの状況
チリは南米の太平洋岸に南北に細長く位置しています。チリではシノバックワクチンを積極的に使用しています。チリはかなりワクチン接種が進んでいますが、陽性率でみると中々低下していません。
また、ウルグアイは同じく南米の太平洋側に位置します。こちらは接種開始直後から高い陽性率となっており、一時は非常に高い陽性率となりましたが、現在は接種開始直後と同じ陽性率となっています。中々効果が見えにくいですがニュースによると重症化は抑制されているとの報道もあります。
サンマリノの状況
サンマリノはイタリア半島北東部に位置する世界で5番名に小さい国家です。F1では1国で2つのGPを開催することができないためサンマリノの名を借りてサンマリノGPをイタリアイモラで開催していたので有名となりました。サンマリノでは観光業が主要産業であり、観光保護の狙いでロシアの開発したスプートニクVワクチンを積極的に活用しています。サンマリノは陽性率のデータを開示していないので新規感染者数で代用して下図に示します。接種数は40%を超えた付近より新規感染者数は減少に転じています。
イスラエル・アメリカ・日本の状況
イスラエル、アメリカ、日本は地域こそ大きく離れていますが、ファイザーおよびモデルナのm-RNAタイプを使用している点で共通しています。イスラエルは接種数が60%を超えたあたりから陽性率は低下に転じており、最終的に接種開始時の陽性率を下回るところまできました。
アメリカは接種開始時の陽性率は14%程度と高かったものの接種開始とともに低下しました。その後停滞期があった後に接種数が60%を超えた付近より再び低下しました。
日本はまだ接種数が少ないのでわかりませんが、アメリカと同じ波形を示しているのは興味深いです。
アメリカとイスラエルの例をみるとワクチン接種数が60%を超えた付近から効果が出始めると推定されます。
イギリスおよびEU諸国の状況
イギリスは現状最もワクチン接種が成功している国の一つです。接種されているワクチンはアストラゼネカ、ファイザー、モデルナとなります。また、EU加盟国はこれに加えジョンソン&ジョンソンを追加して併用しています。イギリスとEU諸国では比率に差異があり、イギリスはアストラゼネカの比率が高いのが特徴となります。(下表参照)
イギリスは接種開始直後から順調に陽性率が低下しました。しかし、最近はδ株により再び若干上昇しています。
ドイツ、フランス、イタリア、カナダは基本的に同じ傾向でした。接種開始直後に陽性率が低下しリバウンド期間があった後に接種数が20から30%を超えた付近より再び低下に転じて現在は接種開始時より低い陽性率となっています。
ファイザー | モデルナ | アストラゼネカ | |
イギリス | 40.5% | 0.2% | 59.3% |
フランス | 75.5% | 8.6% | 15.9% |
ドイツ | 73.8% | 6.7% | 19.6% |
カナダ | 65.8% | 18.2% | 16.0% |
アメリカ | 55.5% | 44.5% | 0.0% |
日本 | 79.5% | 20.5% | 0.0% |
まとめ
ワクチンの種類にもよりますが、接種数が人口比で60%を超える位になるとと(2回接種として人口の30%を超えると)効果がでてくる国が多いようです。日本でも7月末頃にはその領域に入ってきますので期待しましょう。しかしながら、ワクチン接種だけでは説明できない別な要因もあるようですので気を抜かずに感染対策を継続しましょう。