続 世界のワクチン事情

世界のワクチン事情の続編(2021年7月31日時点)となります。

接種状況

日本でもワクチン接種が本格化してきました。世界のワクチン接種状況と比較してみましょう。日本のワクチン接種数は4月30日時点で25位でしたが、6月30日時点では11位に、7月31日時点では5位に上昇しています。また、人口比接種数(1回でも接種した人の割合)は70%となっております。

世界で接種されているワクチン種類をみると、中国は自国製のシノファーム、シノバックで全量をまかなっているようです。ロシアも同様に自国製ワクチンで全量をまかなっているようです。インドはアストラゼネカ製に加えアストラゼネカからライセンスを受けた自国製のワクチンを併用しています。アメリカはファイザーとモデルナが主となっています。それ以外の国は政治色強くアメリカ、ロシア、中国から供給を受けているようです。
なお、下図中に略号で表したのはワクチン種類となります。Pf=ファイザー、As=アストラゼネカ、Ga=ガマレヤ、Mo=モデルナ、J&J=ジョンソン&ジョンソン、SP=シノファーム、I=インド血清研究所、SV=シノバック

順位国名ワクチン
接種数
人口比
接種%
PfAsGaMoJ&JSPISV
1中国1,652,819,000115
2アメリカ345640466103
3ブラジル14248867967
4ドイツ92311871110
5日本8846813470
6イギリス85196986126
7フランス73930933109
8トルコ7327266787
9イタリア68539340113
10インドネシア6776133725
11メキシコ6735534252
12ロシア6190207842
13カナダ49230614130
14ポーランド3442995691
15アルゼンチン3187799871
16パキスタン2964805513
17コロンビア2752437754
18サウジアラビア2686775677
19チリ25649538134
20韓国2546288050
21モロッコ2375551064
22マレーシア2072035164
23タイ1768597425
24UAE16795717170
25ベルギー 14594091126
26ペルー1325747640
27バングラディッシュ128492658
28オーストラリア1220668448
29ポルトガル12131179119
30カンボジア1208831772
31スリランカ1176881055
32エクアドル1141980665
33イスラエル11159389129
34ギリシャ10536457101
35チェコ1034754697
36ドミニカ1014033393
37キューバ989405087
38オーストリア9697415108
39ルーマニア940606349
40カザフスタン910158148
41スイス8983971104
42シンガポール7576612130
43デンマーク7353133127
44ベトナム62038666
45アイルランド 5849924118
46ネパール568262720
47香港566322276
48ウクライナ559470313
49セルビア553617081
50ノルウェイ5409314100

接種スピード比較と日本の状況

ワクチン接種開始直後は様々な事情によりバラツキ が大きいため、ワクチン接種数が人口比で3%を超えた日を起点(ゼロ日)として各国の接種スピードを比較しました。ワクチン接種率が100%を超えるのは2回接種が必要なワクチンが多いためです。現在模範となっているイスラエルの例をみると120%(イスラエルでは2回接種ワクチンが使われているの60%の人が2回接種を終える)位でサチレートしているので、この120%を当初目標値とみるのがよいと思います。

日本では人口比接種数が3%を超えたのは5月5日なので接種が本格化して3ヶ月程経過しました。このままの接種スピードが維持されると仮定すると接種率が120%に達するにはまだ2ヶ月程はかかる見込みです。9月末頃には120%(60%の人が2回接種を終える)に到達すると予測されます。

当初はこれで普通の生活に戻れるかと思っておりましたが、δ株への置き換えが進んでおり油断できない状況となってきました。

接種が先行している国の状況

さて、ワクチンの接種が順調に進んだとして、δ株などの変異種の影響はどうなるのでしょうか?
それを予想するため人口比で接種が進んでいる国を下表に示します。
比較的人口の少ない国や島国などで接種が進んでいます。

また、その形態はワクチンの種類により分類できることがわかります。

シノファーム(SP)が多い国:UAE、セーシェル、バーレーン など
シノバック(SV)が多い国:チリ、ウルグアイなど
ガマレヤ(スプートニクV)が多い国:サンマリノなど
ファイザー、モデルナなどm-RNAが多い国:イスラエル、アメリカ、日本など
ファイザー、モデルナ、アストラゼネカを併用している国:イギリス、EU諸国、カナダなど

この分類別に解析してみます。

国名ワクチン
接種数
人口比
接種%
PfAsGaMoJ&JSPISV
1マルタ759818172
2UAE16795717170
3マン島123947146
4ウルグアイ4788108138
5バーレーン2305354135
6チリ25649538134
7カタール3780468131
8カナダ49230614130
9アルバニア138509130
10シンガポール7576612130
11イスラエル11159389129
12デンマーク7353133127
13ベルギー 14594091126
14イギリス85196986126
15ポルトガル12131179119
16アイルランド 5849924118
17中国1,652,819,000115
18イタリア68539340113
19ドイツ92311871110
20フランス73930933109
21モルディブ590954109
22オーストリア9697415108
23キュラソー175129107
24スイス8983971104
25アメリカ345640466103
26リヒテンシュタイン39205103
27ギリシャ10536457101
28ノルウェイ5409314100
29リトアニア265858698
30チェコ1034754697

UAE・バーレーンの状況

UAEとバーレーンはペルシャ湾岸にあり地理的に近い関係です。また両国は中国のシノファームワクチンを主に使用していますが、傾向には大きな違いがありました。UAEは当初から陽性率が低くワクチン接種数が20%を過ぎた頃より陽性率が徐々に低下しています。一方でバーレーンは接種が進んでも陽性率が上昇を続けました。そして接種数が100%を超えたあたりから急速に陽性率が低下しました。この2国は現在は陽性率が落ち着いておりデルタ株の影響をあまり受けていないようです。

チリ・ウルグアイの状況

チリとウルグアイは南米に位置し中国のシノバックワクチンを積極的に使用している共通点があります。チリは南米の太平洋岸に南北に細長く位置しており、ウルグアイは同じく南米でも太平洋側に位置している違いはあります。ウルグアイは接種開始直後は非常に高い陽性率となっておりワクチン効果が無いものと思いましたが接種数が80%を超えたあたりより減少に転じて現在は比較的低い陽性率となっています。チリにおいても接種数は100%を超えるあたりより減少に転じております。参考までにラムダ株が多いペルーについても追記しまる。チリは南米の太平洋側に位置してシノバックワクチンを同様に使用しています。接種数はまだ少ないですが陽性率は以前より落ち着いてきているようです。チリはラムダ変異株が流行っているとのことですのでその動向も注視していく必要があるかと思います。

サンマリノの状況

サンマリノはイタリア半島北東部に位置する世界で5番名に小さい国家です。F1では1国で2つのGPを開催することができないためサンマリノの名を借りてサンマリノGPをイタリアイモラで開催していたので有名となりました。サンマリノでは観光業が主要産業であり、観光保護の狙いでロシアの開発したスプートニクVワクチンを積極的に活用しています。サンマリノは陽性率のデータを開示していないので新規感染者数で代用して下図に示します。接種数が40%を超えた付近より新規感染者数は減少に転じています。先月までは新規感染者数がほぼゼロまで低下しておりましたが、現在は若干増加しています。おそらくデルタ株の影響かと思います。

イスラエル・アメリカ・日本の状況

イスラエル、アメリカ、日本は地域こそ大きく離れていますが、ファイザーおよびモデルナのm-RNAタイプを使用している点で共通しています。イスラエルは接種数が60%を超えたあたりから陽性率は低下に転じており、最終的に接種開始時の陽性率を下回るところまできました。
アメリカは接種開始時の陽性率は14%程度と高かったものの接種開始とともに低下しました。その後停滞期があった後に接種数が60%を超えた付近より再び低下しました。
日本では接種開始当初はアメリカと同じ傾向を示していました。しかし、7月に入りデルタ株の拡大により陽性率は急上昇しています。残念ながらワクチン接種数はイスラエルやアメリカで効果が出始めた60%を超えてきましたが効果として現れていません。あと1ヶ月接種を早くしておけばと悔やまれるところです。
アメリカとイスラエルにおいてもデルタ株の影響により陽性率は再上昇しており今後の経過に注視していきます。

イギリスおよびEU諸国の状況

イギリスはワクチン接種が成功している国の一つです。接種されているワクチンはアストラゼネカ、ファイザー、モデルナとなります。また、EU加盟国はこれに加えジョンソン&ジョンソンを追加して併用しています。イギリスとEU諸国では比率に差異があり、イギリスはアストラゼネカの比率が高いのが特徴となります。(下表参照)

ファイザーモデルナアストラゼネカ
イギリス40.5%0.2%59.3%
フランス75.5%8.6%15.9%
ドイツ73.8%6.7%19.6%
カナダ65.8%18.2%16.0%
アメリカ55.5%44.5%0.0%
日本79.5%20.5%0.0%
接種ワクチン種類(独自調べ)J&Jは含まず


イギリスは接種開始直後から順調に陽性率が低下しました。しかし、最近はデルタ株により再び上昇しています。
ドイツ、フランス、イタリア、カナダは基本的に同じ傾向でした。接種開始直後に陽性率が低下しリバウンド期間があった後に接種数が20から30%を超えた付近より再び低下に転じています。現在はフランス、イタリア、ドイツでデルタ株によると思われる陽性率の上昇が見受けられます。カナダは現在では接種数が130%にまで増加して接種数でイギリスを上回っています。まだデルタ株の大きな影響はまだ現れていません。

まとめ

今回の解析により、日本でも9月末位にはワクチン接種が先行している国々に肩を並べるところまできそうです。しかしながら、欧州、アメリカ、日本でデルタ株の影響が大きくではじめています。その状況については継続的に監視していきます。