モビリティレポートよりパンデミックに負けない県

ごろーの部屋ではコロナへの感染危険度を数値化してきました。
https://goropon.com/covid/covid-map-risk-quantification-rev3/

この判断因子の一つにGoogleが提供する「COVID-19コミュニティモビリティレポート」による移動傾向のデータがあります。https://www.google.com/covid19/mobility/

このデータ提供期間は当面の間とされていましたが、世界で行動制限を伴う対策は無くなりつつあり、移動度合いがパンデミック前の90%程度まで回復していることから、2022年10月を目処にデータ提供が停止されることとなりました。
そこで、この機会にコミュニティモビリティレポートのデータから都道府県別のコロナの影響を振り返ってみる事としました。

コミュニティモビリティレポートとは

コミュニティモビリティレポートはGoogleが提供しているサービスであり、都道府県別に①retail_and_recreation:小売店 / 娯楽施設 ②grocery_and_pharmacy:食料品店 / 薬局、公園 ③parks:公園 ④transit_stations:交通機関の駅 ⑤workplaces:職場 ⑥residential:住宅 での基準日に対する移動度合いのデータが提供されています。

このデータは日本のみならず世界各地の状況を見ることができます。このデータは、各カテゴリに分類された場所への訪問者(またはその場所に滞在した時間)が曜日別基準値と比べてどう変化したかを示すものとなります。曜日別基準値は、該当する曜日の標準値を表します。具体的には 2020 年 1 月 3 日〜2 月 6 日の 5 週間の曜日別中央値となります。ごろーの部屋ではこの中から①小売店/娯楽施設 ④交通機関の駅 ⑤職場 の3地点のデータを用いて感染危険度を予測しています。

コロナの状況振り返り


 日本ではCOVID-19感染症の流行は2020年1月に武漢型から始まり次々に変異を繰り返し、その度に新規感染者数の増加を引き起こしている。現在はオミクロン株BA.5変異株による第7波の感染ピークが収束しつつある所である。悲観的な推測をすると数ヶ月以内に次の変異株が発生し第8波と呼ばれるであろう感染増加が発生すると見られる。次の変異株が軽症化するのを祈るばかりである。
なお、詳しい状況は変異株まとめに記載している。

東京での変異株の推移
東京での変異株の推移

行動規制の状況

このパンデミックにおいて、政府は欧米のような強制力を持ったロックダウンでなく、要請ベースによる緊急事態宣言とまん延等防止処置を行った。下図は東京オリンピック後のデルタ株による第5波の状況である。それ以外の状況は都道府県別にまとめているのでprefectureを参照ください。
赤色:緊急事態宣言   黄色:まん延等防止処置

行動規制例
行動規制状況例

また、2020年1月1日から2022年9月30日までの期間にて緊急事態宣言の発令されている日を0.5、まん延等防止処置が発令されている日を0.8、行動制限が発令されていない日を1として総和を求めると下図のように都道府県別の行動制限状況が表される。東京、神奈川、埼玉、大阪、兵庫、京都、愛知、福岡などの大都市で行動制限が多く発令されたことがわかる。

行動規制状況総和
行動制限状況総和マップ

小売店/娯楽施設での状況

 都道府県によりコロナによる落ち込みと回復の傾向に差異がみられた。
東京、神奈川などの大都市では落ち込みが大きく現在に至るまでコロナ前の状況を回復していない。

一方で富山、秋田、新潟においては2020年末よりコロナ前の状況を回復している。
その後は毎年第1四半期に落ち込むもののすぐに回復し年々増加している。
これらの県では小売店と娯楽施設においてはコロナを克服している。

小売店/娯楽施設での移動度合いの推移
小売店/娯楽施設での移動度合いの推移
小売店/娯楽施設での移動度合いの総和
小売店/娯楽施設での移動度合いの総和

交通機関の駅での状況

 交通機関の駅ではその傾向はさらに顕著である。
落ち込みが激しいのは昔太平洋ベルト地帯と呼ばれたところで、東京、大阪、福岡がその中心である。これらの地区では2022年第3四半期でもコロナ前の水準のマイナス30%に過ぎない。

一方で徳島、宮崎、福井では2020年第3四半期で既にコロナ前の水準を上回り、その後変異株の流行による落ち込みはあるものの年々増加し、2022年第3四半期には徳島ではコロナ前より30%増加している。

交通機関の駅での移動度合いの推移
交通機関の駅での移動度合いの推移
交通機関の駅での移動度合いの総和
交通機関の駅での移動度合いの総和

workplaces:職場での状況

職場での状況は他の2つと少し異なる。
いずれの都道府県でも未だにコロナ前の水準を回復していない。
この傾向は東京、神奈川、沖縄で顕著であり特に東京ではコロナ前のマイナス20%にとどまっている。
これはコロナの影響が少なくなってもテレワークを継続している企業が多いためと推測される。

職場での移動度合いの推移
職場での移動度合いの推移
職場での移動度合いの総和
職場での移動度合いの総和

まとめ

小売店/娯楽施設:徳島県、宮崎県、福井県でコロナ前より増加している傾向が大きい
交通機関の駅:富山県、秋田県、新潟県でコロナ前より増加している傾向が大きい
職場:山形県、和歌山県、富山県がコロナからの回復傾向が大きいが依然としてコロナ前よりはマイナスとなっている。

これらの解析結果から、いちばん顕著な交通機関の駅でみてみると、九州の宮崎県、四国の徳島県、北陸地方の福井県はコロナからの復活が顕著でありパンデミックに負けない県といえる。

他方で東京都、大阪府、愛知県、福岡県などの大都市は総じて回復が鈍くパンデミックに弱い。