散歩日記 近所の猫「ろく」の一人旅

 コロナにより会社への出社が制限され、リモートワークをしている時の話。リモートワークでは行動範囲が極端に減ります。一日中椅子に座ってパソコンで仕事をしていると、食事とトイレ以外は半径2m位が私の縄張りとなります。
そうすると体重増加というより気分的によろしくありません。そこで縄張りを広げるために日中散歩に出かける事としました。

縄張りは、はじめはいくつかルートがあったのですが、次第に一つのルートに決まってきました。それは自分で言うのも何ですが、変化に富む面白いルートです。
まずは昭和のレトロな雰囲気のある商店街にはじまり。神社に通じる長い階段を駆け上がり今日の体調をチェックして神社でお祈りをします。

神社への階段の写真
神社への階段

そして、国道沿いから某女子校の間を通り抜け、鉄道マニアが泣いて喜びそうな線路を跨ぐ大きな橋を渡り、春は桜の名所となる某国大使館前を通り、急坂を今度は一気に川沿いまでくだります。そしてこれまた桜の名所の某川沿いの小道を進み、某有名スーパーで一休みです。そして今度は某女子大のある高級住宅街を通りまた坂道をあがります。そして、とても美味しい小さなパン屋さんで明日の昼食を買い、某高級ホテルの中庭を通り、密集の代表映像となる某駅通路を通り抜けて帰路につきます。大体1時間ちょっとのコースとなります。

ルートにはいくつかのオプションはあるものの、基本この範囲を縄張りとして毎日見回りをすることにしました。ずいぶんと縄張りが広がりました。毎日縄張りを見回りする猫の気持ちが少しはわかった気がします。大雨でもない限り縄張りパトロールが日課となっていました。

さて、昭和のレトロな香りのする商店街の路地裏では猫が道で寝転がっています。なんて平和な商店街なのだろう。猫にも個性があって、こちらがニャーと鳴くとニャーと返してくれる猫から、完全無視の猫、黙ってなでさせてくれる猫、ソーシャルディスタンスを保たないと許さないぞと目線で訴えるものまで。

商店街の猫
商店街路地裏の猫

 その中で本日の主人公はこの子です。
名前は最近知りましたが「ろく」というらしい。飼い猫なのですが外への出入りは自由にできるみたいで、天気の良い日には道端で日向ぼっこをしています。おとなしい性格みたいで、近寄っても逃げる事はありません。なでなですると嫌がらずになでなでされている大人しい子です。

今日の主役のろく

この子とは結構縁があります。ある時は道端に座っていたので近寄ると、急に地面を掻き出しはじめました。どうしたのかと思いしばらく見ていると、少し気まずそうに歩いていきました。そう「うんこ」 している最中に声をかけてしまったみたいです。でも道端でうんこするなよと逆に突っ込みたい気分でした。

そんなある日、ろくちゃんの家の前に1枚の張り紙がありました。
内容下記
「11日(月)から姿を見せなかったろくちゃんですが今日(15日)の夜○○駅近くの元○○の所で保護されて大変ご親切にも連れてきて頂きました。有難うございました。ケガもしないで帰ってきて本当に良かったです。とりあえずご報告させて頂きます。首のベタベタはお薬です。」


そう、しばらく見かけないと思っていたら、おとなしそうな顔をして線路を渡って1キロ以上先まで一人旅に出てしまったみたいです。でも途中で迷子になって帰れなくなったみたいです。でも、無事でなによりです。張り紙によると、幸いにもロクちゃんを知っている方が発見して、親切にも家まで連れて帰ってきてくれたんだそうです。ろくちゃん みんなに見守られていてよかったね。大都会の心の温まる物語でした。

張り紙
張り紙